ずっと好きだった人がいた。大学時代ほとんどずっと彼のことがすきだった。
1度目の告白は気持ちの堤防が決壊した果てだった。大切なともだちだったし今の関係を崩してまで恋人になる理由なんてないようにも思った。でも、想いは募るばかりである日その想いを吐き出さずにはいられないほどの気持ちになった。彼の話す言葉がすきだった。目と声と手もすきだった。「恋人には思えないけどともだちでいたい。」と言われ振られた。あの頃の私は今よりずっと強がりだったから、翌日から何事もなかったように振る舞った。彼もあの告白がなかったかのように、無邪気な笑顔を見せた。それから何度もともだちと思おうと思ったし気持ちを消そうとしたけれど、どうやってもそれは叶わなかった。一緒にいて、彼より楽しくてしあわせな気持ちになれる男の子なんていなかった。ともだちぶった日々を1年過ごしたあと、ひとつのことを決意した。もう一度告白してだめだったらともだちでいるのもやめよう。会わないことでしか私の疼くような痛みは消えない。そう思った。
「まだ好きという気持ちが消えない。一年前からずっと消えなかった。」ビールのグラスを見ながらそう言った。彼の気持ちは大体全部わかっていた。彼はどうしても私を恋愛対象とは思えないということも、彼の方から私を突き放しはしないということも、私が決意をしなければこのままずっとぬるま湯(だけど辛い日々)が続くことも、全部、ちゃんとわかっていた。わかっていたからこそ、この先会わないということを選ぶしか術がなかった。ほんとうにもう限界だった。嫉妬心や不安感や猜疑心ばかり。笑ったり冗談を言ったりしながらも、心の中はコールタールだった。いつも黒くてどろりとしたものが私の心に纏わりついていた。だから、彼から吐き出された台詞は予想していた通りのもので、こころが痛んだけれど、崖から突き落とされたような、鈍器で後頭部を殴られたような、そういった痛みではなかった。
あの日から彼の携帯の番号もメールもすべて消して、ほんとうに連絡を絶った。自分で決めたことだったのにずっと泣いてばかりいて、体重も7キロ近く落ちた。
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あれから6年経ったこの前の週末、ひょんなことから彼に出会った。共通の友人を交えたお酒の席で。
彼を目の前にして、あの日々のことが小さく少しずつ、脳裏を過ぎった。でもそのことを悟られないように、注意深く目線を送り、話をした。彼ばかり見つめないように触れないように話さないように。とても慎重な気持ちだった。どうしようもないことをどうしようもないんだと受け入れることにどれだけ時間がかかっただろう。今ではもう彼よりすきな人がいるし、ちゃんと諦めて葬った恋なのに、やっぱり少し苦しかった。すきだった彼のはにかむ笑顔や話す言葉や身体や動きすべては、あの頃と変わらないままで、当然私への気持も微動だにしていなくて、私はこの先ずっと、彼にとって恋人にしたい存在ではないのだろうなと思うと苦しくてたまらなかった。なにをがんばってもどう動いても、私が私である以上はだめなんだってことにただ打ちのめされた。叶わない恋愛をみんなはどうやって葬っているんだろう。私は会わないということでしか葬れなかった。そしてその古傷は彼を目の前にすると、まだ疼くんだという事実が、そこに静かに横たわっていた。